スーパーのレジの列があまりにも長いので、脇に置いてある雑誌の棚を見てみる。
普段は女性誌(特にファッション誌)は美容室で読むくらいで、
それほど興味はないのだけど「夏のバカンス」という魅惑的な特集に惹かれて、
つい買ってしまった。
家に帰り十文字に縛ってあった紐をハサミで切って、付録のビニール製のポーチを取り出す。
「この中になにを入れようかな〜?」
そのポーチと一緒にジュエリー系の小冊子が入っていたことに気がついた。
小冊子の表紙に思わず目を奪われた。
白人モデルの美しさにではない。
モデルの顔、首、腕がソバカスだらけだったからだ。
額から頰、首まで全体がくまなくソバカスの水玉で埋め尽くされていて、
かなり濃いうぶ毛の処理もされていない顔が、どアップで表紙になっていた。
決して美しい肌とは言えない。
しかも小冊子とはいえ高級ジュエリーの◯○パールや、◯ル◯スなどが掲載されている一流雑誌だ。
うぶ毛を剃って、メイクでソバカスを隠したなら中性的でかっこいい女性だ。
けれどもあえてそれをしないのはなぜ?
一昔前なら考えられない様相が、今は表紙になる時代なのだと思った。
この人の魅力を引き出すには、メイクで肌の欠点を隠すことは意味のないこと。
むしろそれを前面に出した方が、モデルとジュエリーの魅力が引き立つのだと感じた。
隠してしまったら、ただの「綺麗な女性」で他のモデルと大差がないかもしれない。
実際この小冊子の中でこんな様相で掲載されているモデルは、この人以外にいないのだ。
負とも言える特徴を、武器にすると「コアビジネス」になる。
渡辺直美や森三中それ以外のおデブや、おブスなタレントたち。
彼女たちは見るものに優越感を、与えているのではない。
自分たちの魅力を知っていて、マイナスの要素に抗わないでいる素敵な人たちだから愛されるのだ。
ダイエットをしたり別人のようにメイクを施したら、その人たちの魅力まで消え去ってしまう。
またそれらの人の持つ共通点は「絶対的な自信」だ。
森三中の大島は幼少期からデブで、かなりいじめにあったというエピソードは有名だ。
「泣いた顔がおもしろい」と言われて、泣くように同級生から仕向けられた。
そうして泣くと、皆が面白がる。
それを彼女はある日「私が泣かされているのではない。私が皆を笑わかせてやっているのだ」
と発想を切り替えたことが、彼女がお笑い芸人へと進んだきっかけなのだそうだ。
そのきっかけが彼女の絶対的な自信であり、卑屈さのない芸人魂として人へ伝わり大成功を収めている。
そうして結婚して10年以上経って、長い間欲しくてたまらなかった子供もそろそろ生まれる。
夫の鈴木おさむは彼女に会うまで、一流モデルと交際していたという。
けれども大島と出会い、そのモデルとの仲を解消した。
自分の力で負の要素を正に変えた人の自信は、容姿にはかなわない魅力と説得力があるのだと思う。
また「子供が欲しい」という欲望にも忠実に生きてきた。
結婚して10年以上幾度も流産のすえ、子供ができなければ諦めしまいがちなことを、
妊娠ができるという確証のない「妊活」の期間を取って不妊治療をしていることも隠さない。
自分の進む方向に自信がある人は隠さない強さがある。
渡辺直美もデビューから数十キロも太っているそうだが、
ダイエットの企画のたびに痩せては、リバウンドを繰り返しているのが何度も放送されている。
彼女は仕事のためにダイエット企画をこなしただけで、本人は痩せようとは思っていないのだろう。
それよりも好きな炭水化物を山盛り食べて、
自分に似合うファッションで魅力を発揮する方が効果的なことを、熟知しているのだと思う。
容姿は元の良し悪しではなく「自分の真の魅力がわかっている人」にしか引き出せない。
そうしてそれは、万人に受け入れられるものではないということにも腹をくくれば、
負の要素が怖くなくなり、自信につながる。
恥を隠さない覚悟のある人が、ある程度の歳月をかけて、
持って生まれた負の特徴を最大限に生かし仕事に発揮すると、
誰にも真似のできない「最強のコアビジネス」が誕生する。
誰にでも起こるわけではない負の経験も、悲しんでいるばかりが能ではない。
立派な財産なのだ。
これからどんどん雇用が、労働賃金の安い海外へ流れていくという時代だ。
しかもこれまで人がやっていた事務も、経理も、お茶汲みも、床掃除も、レジ打ちも、
すべて機械がやってくれて人の手が要らなくなっている。
そのなかで生き残れるのは、誰にも真似ができない負の要素を生かしたコアビジネスなのかもしれない。
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