「大好き」だと口にするのは、意外に難しい

「大好き」という言葉を、誰かへ伝えたことはありますか?

何人かの人から言われた記憶があるのですが、私自身はあまり伝えていない氣がします。

ある人から誕生日、クリスマス、など季節に応じた手紙やカードを折に触れてもらいます。

その人のカードにはいつも「大好きだよ」と書いてあるのです。

私もその人のことは、大好きです。

そうしてときどき、私からもカードや手紙も渡しています。

けれども恐らく私は「大好き」だという言葉を書き返していない。

「おめでとう」とか「ありがとう」とか「楽しく過ごしてね」などの願望を書いてばかりです。

その人とは明日中学に入学する、甥のことなんですけどね。

可愛くて、可愛くて

叔母バカを承知で書かせてください。

兄の子なのに、私にそっくりな顔で生まれてきた甥。

甥が赤ちゃんのころは兄夫婦から「ぷっ、頼むからこっち向かないで」と言われるほど、私にそっくりだったようです。(自分ではわからないものですね)

また顔が似ているせいか、甥も私をいつも追いかけてきました。

義姉の押すベビーカーに乗っているのに、私の手を握りしめて離さない。

私は腰をかがめて、手をつないで歩く始末。

そうして私はいつも彼を抱きしめて「カワイイ、カワイイ、カワイイーーー‼︎」と伝えていました。

ということで「カワイイ」はさんざん伝えましたから「大好き」だという気持ちは、当然伝わっているものだと思っていました。

驚くほどがんばった、中学受験

怖がりで、痩せっぽっちで、白米しか食べなかった偏食なところも、子供のころの私にそっくりでした。

競争に興味がなく幼稚園の駆けっこではスタートした途端、スーパーマリオのようにピヨンとスキップを始めて「あちゃー」となりました。

そんな甥が行きたい中学があり、受験することを決めたときは「大丈夫か?」と正直思いました。

休みの日も早朝から夜まで、ものすごい量の勉強をこなしていたようです。

私は今の受験の状況も、学校のレベルもまったく知りません。

叔母としては結果なんてどうでもよくて、ただただ体を壊さないことを祈るのみ。

どこの学校に受かったかを聞きはしましたが、覚えていません。

けれどもとにかく最後まで、諦めず頑張り抜いた。

そんな根性が甥にあることを初めて見せられて、ものすごく感動して尊敬の念を抱いたのです。

「大好き」って相手を、尊敬していないと言えない

小学校の卒業式の後、会食の場が設けられました。

卒業祝いと新入学祝いのプレゼントにカードを添えるとき、甥への感動を伝えたくなったのです。

そうして過去に甥からもらったカードや手紙を見返すと、どれにも「大好きだよ」と書いてありました。

なんのてらいもなく書いてあるのに「大好き」にはしっかりと氣持ちが込められています。

そこで私は甥に一度も「大好き」を伝えていなかったことに、氣がつくのです。

甥のようにまっすぐに書きたいのですが、案外これが難しい。

照れなのか、なんなのか感情が入り混じり、どうも嘘くさい。

「なぜこんなに回りくどい表現や、大好きな理由を書こうとするのだろう?」と戸惑いました。

どうにも私の感情の一部が「君が私を大好きなのは、私がとっても可愛がったから」といった上からのおごりがありました。

上からの意識を対等にすることができないと、薄っぺらな「大好き」になるのかと思います。

物や誰かの部分的なことを「大好き」だと言うのは簡単なのだ

日頃「私はあなたの、こういうところが大好きだ」とは伝えているかと思います。

あるいは中途半端に好きな人へも「大好き」とだと伝えることができるかもしれません。

それは「自分が好かれたい」と見返りを求める場面で使った覚えがあります。

けれども正直な「ありがとう」と「ごめんなさい」という言葉は、力のある人にしか言えない。

また心からの「あなたが大好き」は「ありがとう」や「ごめんなさい」を上回る力を要する言葉なのではないかと思ったのです。

存在すべてが好きな相手にしか、ストレートには伝えられないでしょう。

父へ伝えなかった後悔

こんなにも「大好き」という言葉が引っかかったのも、父の生前伝えていなかったことを後悔しているから。

それも父が亡くなってしばらくして、父が大好きだったことに氣がついたのです。

そうしていくら天国から見守っていると思っていても、実際に伝えたかどうかは別の意味を持つと思います。

私には「私はあなたのことが大好きなの」と思春期に他者から言われたことで、フワッと救われた記憶があります。

恋愛感情の介在しない大人の女性から、にこやかに伝えられました。

「あぁ、私は存在するだけで喜ばれている」と初めて思えた瞬間でした。

大好きな人へ、命あるうちに大好きだと伝える。

こんなにも単純だけどとても難しいことを、できてしまう甥は私よりずっと大人なのだな。

理屈なしで相手の存在を、まるごと肯定する表現。

他に取って代わるもののない、最上級の敬意を表す行為が「大好き」を伝えることなのかもしれません。


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