何気なく挨拶で使われる「元気」という言葉。
10年前マクロビオティックを勉強し始めたころ、講義のときに講師からこの言葉の解説があった。
「皆さん、マクロビオティックを健康法と思ってはいないですか?
健康になることが最終目的の人はそれでいいのですが、
マクロビオティックの最終目的は『世界平和』です」
これがマクロビオティックが、宗教と勘違いされる所以なのかと思い聞いていた。
「元気は『元の気』と書きます。元の気とは『野生の勘』のことです。
人間は誰もが、もともとその勘を持って生まれてくるのです。それが『最高判断力』というものです。
最高判断力を持っている人は戦争をしません。
戦争は利権が絡んでいる人が得するだけで、それ以外の人たちは無駄に傷つくからです。
マクロビオティックの最終目的は最高判断力です」
そこで『最高判断力とは?』の説明が入った。
「昭和30年に起きた森永ヒ素ミルク中毒事件。
この事件から数十年経った後、被害者家族を追跡し取材したジャーナリストがいます。
その人が言うには被害者(乳幼児)のお母さん方は、会社を責めていないのです。
責めているのは母親が自身を責めています。
なぜならばそのミルクを与えようとしたときに、どの子も激しく泣いて飲むのを嫌がった。
激しく泣いて抵抗する赤ちゃんに負けた母親の赤ん坊は助かった。
けれども嫌がる赤ん坊に無理やり飲ませてしまった子が、命を落としてしまった。
『子供を殺したのは自分だ』と自分をずっと責め続けているのです」
ヒ素という猛毒が混入されていることを、赤ちゃんたちは知っていたというのが、
『最高判断力』のなせる技なのだということだった。
私はマクロビオティックを推奨しているわけではない。
デトックスや、健康法として取り入れる知識としては、今でもとても素晴らしいものと思っている。
野菜の栄養を損なわないよう、美味しく調理する方法を学べたこともとても重宝している。
実際マクロビオティックに出会ってガンや自己免疫疾患の重症患者が、
治ったという症例は多数ある。
けれども私がマクロビオティックから離れた理由として、
・まず第一にこれだけ美味しいものが溢れている現代社会で、
「肉魚、乳製品をすべて断ち、食に我慢を強いる」というところに違和感があった。
・また歴代の指導者は早死にだったり、平均寿命ていど。
・現役指導者たちの顔色がひどく悪かったり、ヒステリーだったりと見習いたいと思える人たちがいない。
この3点だった。
知識を学び実践をしても、私はパニック障害になった。
それは「食」だけで自分の心のコントロールができるようになるわけではないという、
自分でおこなった人体実験のようなものだった。
パニック障害のときに漢方医から言われたのは、
「私の患者さんたちでマクロビオティックを実践している人には、不安感が強い人が多いですよ。
それは昔と今では環境汚染が進み、土地が痩せ、人参1本の栄養価でも昔と同じ量を摂るためには、
5本〜8本食べなければ得られません。これは有機無農薬野菜でも同じことです。
特に脳の働きに必要な栄養素の『必須アミノ酸』がマクロビオティックの昆布だしだけでは、全然足りません。
肉も魚も必要です」
慢性的に脳が栄養失調を起こすと、不安、鬱、パニック障害になる可能性が上がるということだった。
話を元に戻そう。
「元の気」というのは、赤ちゃんの頃の野生の勘。これが最高判断力だということ。
これが年とともに失われてしまうのは、乱れた食生活や、
社会環境や人間関係からもたらされるストレス。
私の持論として、食生活は補助的なものだと思っている。
なぜなら私の祖母は甘いものが大好きで、毎日タバコも吸っていた。
昔の人だからタバコ1本をもったいないと言って、2、3回に分けてシケモクを吸っていた。
シケモクは普通のタバコよりニコチン含有量が、数十倍に上がると言われても気にしない。
農家だったけど、自分で食べる野菜はお漬物ばかり。
祖母の得意料理の五目ずしは、
彼女の世代の贅沢品の白砂糖がたっぷりと使われていて、お菓子みたいに甘かった。
塩辛や、揚げ物など老人に悪いと言われるものも、大好きな白米と一緒にガバガバ食べていた。
お風呂上りにはヤクルトを2本美味しそうに飲み干すのが、毎日の楽しみ。
今の糖質制限など、まったく無視だ。けれども101歳の長寿だった。
98歳で体調を崩して入院するまで、
一人で自分の好きなペースでストレスなく暮らしていたのが良かったのだと思う。
そうしてこの祖母の判断は、いつも正しかった。
老人相手に金の延べ棒を売るやくざまがいのセールスマンがきて、
どれだけもうかるのだと説得されて脅されても、
「そんなにもうかるのなら、あなたが買いなさい」
と何時間居座られても、相手が音を上げるまで一切動じない。
なにか奇妙なことを感じるとすぐに「これはおかしい、調べたほうがいい」と、
孫の病気を誰よりも早く察知したりしていた。
学もなにもない人だったけど、祖母の判断力には親族の誰もが一目置いていた。
彼女の判断力の鋭さは一人で暮らすことで、人の意見や顔色に惑わされることがなかった。
そうして好きなものを、好きな時に喜んで食べて、眠たくなったら眠る。
そんな悠々自適な生活に心が満たされているから、物欲、金欲もない。
赤ちゃんと同じだ。
嫌なことはしない。そこには孤独も伴うかもしれない。
だからこそ子供や孫が遊びに行くと、喜びもひとしおになるから寂しくない。
最高判断力を発動させる環境の整え方はそれぞれあると思うけど、
自分と周りの人間が平和に暮らすために本来の「元気」な環境作りをイメージしよう。
投稿がお気に召しましたら、ポチッとクリックをお願いします!
↓いつも応援ありがとうございます。- 投稿タグ
- マクロビオティック弊害, 元気の本当の意味, 最高判断力