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「声が出したいんだ」
唐突に打ち明けられた。

小さな声で話す友人男性。
何度も聞き返さなければ、
なにを話しているか聞こえないほどの小声。

古くからの友人関係が続いているわけだから、
とてもいい人だ。

だけど彼には人の話を否定的にとらえる癖がある。
例えば「最近痩せたのではないか?」と何気なく言うと、
「病気と思われている」と彼の頭では変換される。

だから最近の食べた健康的な食事内容の説明を始める。
私は「痩せたかどうかを聞いただけ」なので、
そう伝えるとハッとして
「あ、そうか」
と言い「痩せていない」と小さな声で答える。

いい人なのだけど声が小さなことと、
質問の答えがまっすぐ帰ってこないのは、
話していて疲れることがある。

カラオケで歌う時はとても大きな声なのに、
なぜか話す段になると、独り言のように小さくなる。

 

「自分のことが好きになれない」
ある日彼はそう言った。

好きになれない自分の発言に自信が持てないから、
大きな声で話せないし、
人の話もねじ曲がって聞こえてしまうのだそうだ。
家庭もあり、やりがいのある仕事もしている。
それでもなお自分のことが好きになれないのだ。

自分で自分のことを愛せないとわかっている人に、
「愛してあげなきゃかわいそうだよ」
と言ったところで百も承知だ。

 

自分を愛すことができなければ、自分の発言も信じられない。
だから人の発言だって信じることができない。

「痩せた?」という質問ひとつにしても、
ぐるぐると妄想が頭のなかを駆け巡る。

自信が持てないのは恥をかくことを恐れていて、
狭い守備範囲で行動をしてしまうからだ。

「旅の恥はかき捨て」というけれど、
誰も知る人のいない場所で思う存分自分をさらけ出し、
受け入れられなければ、
受け入れてもらえるまで違う場所を探すのが、
面倒なようでいて、
いちばん手っ取り早い自信のつけ方だと私は思っている。

 

行動力はとてもある人なので、順調に出世をしている。
その行動力で私生活に自信が持てるものを、
探しに行くというのはどうだろう?と聞いてみた。

すると「声が出したいんだ」と言った。

「俺なぜか人の声にすごく興味があって、
最近たまたま『声のレッスン』という講座を見つけて、
申し込もうかどうか迷っていたんだ」
と声優などを育成する講座の話をしてくれた。

「それいいねー!」
と私もピンときた。
自信がついたら声を出せるようになるのではなく、
先に声を出す練習をすることで自信がつくかもしれない。
そうして自信がつけば自分を愛することができるという、
逆転の発想だった。

彼は私が大賛成したことで、
その講座を申し込むことにした。

この男性のように挫折らしい挫折をしていないのに、
若い頃から自信の持てないまま生きている人もいる。

友人として頼もしく感じたのは、
彼が自分に自信がないから、

人の言葉もねじ曲がって聞こえてしまう
ということまでは気がついていたことが、
「大きな声を出す」
という発想につながったことだった。

 

自信が持てずに新たなことに踏み込めない人は、
苦手なことにチャレンジするのもひとつの手だ。

無理して楽しめることを探すのではなく、
あえて苦手なことをやってみることで、
今まで知らなかった自分に出会えるかもしれない。


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