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 「理想の母親像を追い求めて」の前編はこちらから

 

 

 

 

正義心が強かったゆえの困難

「自分がしっかりしなくちゃならない」
そう思いながら幼少期を過ごしたEさんは、
小学校4年生になると正義心の強い女の子になっていた。

誰かがいじめられていれば、
いじめを止めるよう、
1人ででもいじめっ子たちに歯向かって行っていた。

正義心で誰かを守っていたはずなのに、
歯向かった相手から
自分がいじめのターゲットにされていた。

クラスには気の強い2人の女子がいて、
ある日その子たちと口論になり、
負けん気が強かったEさんは汚い言葉を浴びせた。

その2人は若い男性の担任に
「汚い言葉を使っている」
と告げ口をしに行っていた。

担任に取り入るのがとても上手な子たちで、
担任はすっかり2人の言葉を信用してしまった。

Eさんは担任からなにも事情を聞かれないまま、
女子ばかりの生理の授業中に突然、
「なぜそんなに汚い言葉を使った!」
と全員の前で授業とはまったく関係のない叱責を受けた。

それは本当にショッキングな事件で、
なにも言わせてもらえず泣きじゃくるしかなかった。

大人になっても、
なかなか忘れることができずにいた辛い記憶だ。

家から担任には母親の病状は知らせていなかったのだけど、
Eさんは
「友達もできないし、担任にも嫌われたのは、
あんな母親に育てられたからだ!」
とやるせない気持ちがどうしても、
「頼りない母」「変な母」に行き着いてしまっていた。

 

結婚してやっと生まれた宝物

そんなEさんも25歳になり、
かねてから交際していた男性と結婚した。

結婚してなかなか子供ができず、
3年後にようやく授かった女の子。

それまでに母から
「女性は25歳までに結婚しなさい」
と言われて素直にそれに従い、
子供がなかなかできなければ、
「なんでだろうね?〜さんの娘さんは早くに産んでいるのに」
と皮肉交じりに言われた。

自分の望むことをしてくれなかった母から、
「娘とはこうあるべき」
というプレッシャーをかけられていることは、
耐え難い屈辱だった。

またそんな意見など無視すればいいと思いながらも、
気にし過ぎてしまう自分がいた。

母から常に
「娘として」
の呪縛をかけられているように感じているのは、
とても心の狭い人間に思えて嫌いだった。

そんな心の苦しみを経て生まれた、大切な娘。

「自分が母にちゃんと育ててもらえなかった分、
この子はちゃんと育てよう」
と思っていた。

だけど小学生のときクラスメイトや担任から
いじめにあってしまった事件があって以来、
すっかり引っ込み思案な大人になっていた。

Eさんの母がそうだったように、
Eさんも人の目を気にするあまり、
自分の言動に自信が持てないまま母親になった。

「自分が変な言動をしたから、
小学生のときにあのような目にあったのではないだろうか?」
という不信感が抜けきれずにいた。

そのトラウマで、お母さん同士の輪の中に入っていくのは恐怖だった。

公園デビューの前日には緊張して眠れない。
「自分は変なことをやったり、言ったりしないように」
そう言い聞かせて、子供を連れて行っていた。

結果、誰とも仲良くすることができて、
今では人と接することに対する苦手意識は消えた。
それは娘が自分を大きく育ててくれた部分でもある。

 

連鎖する母子関係

一方自分の母からしてもらえなかったEさんの持つ
「母親の理想像」を追い求めすぎて、
無理してまでよき母を娘に対して演じているのは、
とてもきついことだった。

「ちゃんと育てよう」
と半ば強迫観念に駆られながら子育てをするから、
娘が病気をすると
「面倒臭い」
とやはり感じてしまっていた。

娘が自分に似てひっこみ思案で、
人の輪に入って行けない部分や、
思っていることを人に伝えない姿を見ると、
あまりにも昔の自分に似すぎていて、腹が立つ。

そんな風に感じてしまう自分にも腹が立ち、
娘に対してとても申し訳なく思う気持ちとで、
がんじがらめになっていた。

 

「ちゃんと育てたはず」なのになぜ?

2番目の子供である息子にはこのような感情は抱かないのに、
娘にだけ抱いてしまうのはなぜだろう?
と聞いてみた。

すると結婚前から
「女の子が生まれたら自分が母親からして欲しかった、
可愛い服やヘアスタイル、不安のない毎日を過ごさせて、
親から作り上げられた自分の性格のイヤな部分を、
娘には引き継いでほしくなかった」
そう考えていたからだと答えた。

自分が与えてもらえなかった親からの愛情を、
娘に与えていたにも関わらず、
自分が悩んだ一番イヤな部分を引き継いでしまった娘を、
受け止めきれずにいた。

自分が娘を支配していることはわかっていた。
「娘は自分の分身」
だと固く信じて、

離れて暮らしているのに、
娘はいつもEさんの心配をしていて、精神的にお互い離れられない。

それが現在Eさんの抱えていた一番の悩みだった。

 

自分の母親から心理的に離れることで、
娘とも親離れ子離れが成立する。

Eさんはこの心のうちを明かしてくれたときに、
自分が母親から受けたような感情を
娘に向けてしまっていることに気がついた。

それは自分が年老いた母親に今でも
「娘である以上母を支えなくては」
という義務感を持って接しているということだった。

引っ込み思案だった自分の心を、大きく成長させてくれた娘。
自分以上に大切な存在があることを、気づかせてくれた娘。
その大切な娘にいつの間にか頼ってしまっていた。

そうして自分が母から背負わされていた、
背負わなくていい重荷を、娘にも背負わせてしまっていた。

娘を頼りにすることを今からでもやめないと、
娘はずっとEさんを支えるために心配する生活を続けてしまうし、
精神的に「親離れ、子離れ」ができない。

また娘と精神的に離れるには、
まずは自分の母と
「(娘なのだから)支えなくては」
という義務感を捨て去ることから始めることで、
娘に対して同じような感情を求めずに済むのではないか?
という結論に至った。


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