フリーフォールより怖い、中年の初心者運転
「◯カ、バ◯、◯カー‼︎」と◯◯の3連チャンを朝から言っていたのは、私です。笑
両隣には◯ンツの最高級クラスAMGと、黒光りをしたゲレンデワーゲンが、どちらも多少斜め気味に駐車しています。
間に挟まっている私と友人の乗っている車の両脇には、1センチに満たない隙間しかありません。
運転をしていた友人は真っ青になって「どうしよう、もう出せない」と弱音を吐きました。
「一度入ったものは、必ず出るんだよー!」と私は怒って言いました。
なんの悪夢でしょう?
35歳で初の運転免許証を取得して、そのまま7年間まったく乗らずにいた友人男性がいます。
「生涯独身」を誓ってきた人だけど、最近結婚を考える彼女ができたそうです。
彼女とドライブに行きたいから、ペーパードライバー教習を私にしてくれと頼んできたのです!
「イーヤーダー‼︎あなたが天皇陛下だろうが、100万円くれるって言ってもイーヤーダ!」と激しく抵抗しました。
教習所へ行くように促しても「みっともないじゃない。免許取るときだって、自分より若い教官だったよ!」と逆ギレ。
一緒にスポーツをしたことはありませんが、見るからに運動神経や反射神経が私より悪そうなんです。
すると私の部屋の断捨離を手伝ってくれると言われて、気持ちが動きます。
痛いところを突かれました。
彼はとってもきれい好きで、お部屋はいつ行ってもピカピカなのです。
お料理も上手だし、お酒も大好きなので気は合います。
「このまま独身でいた方がいいんじゃない?こんなになんでもできると、彼女が出る幕がないでしょう?」
こちらも必死ですから、あくまでも車に乗らなくていい口実を作ります。
相当お気に入りの相手らしく「初めて結婚をしたいという相手に出会ったんだ」と言われては、断りにくくなりました。
私の頭に浮かんだのは2人のウェディング姿ではなく、あの感動的にピカピカと磨き上げられたキッチン、洗面所とおトイレでした。
梅雨明けに断捨離ではなく我が家の大掃除を手伝ってもらい、豪華な自宅ディナーへご招待してくれることで、交渉成立しました。
想像以上に怖かった!
最初は友人のマンションの敷地の中を休日の早朝4:00、誰もいない時間を見計らってスタートしました。
公道に出る前にどれだけ運転ができるのか、見なければなりません。
角を曲がる際、カーブ内でアクセルを入れて駐車中の車にぶつけそうになりました。
「スローイン、クイックアウトって習わなかった?」とスパルタックスの反乱が起きます。
ブレーキングも遅いので、なんども前につんのめって吐きそうです。
焦るので車庫入れもまったくままならない。
「あのさー、マニュアル車じゃないのに、よくこんなにガクンガクンなるよね?本当に卒業試験受かったの?」ときつい言葉を吐きまくりますが、友人はゲラゲラ笑ってまったくヘコミません。
愛は強いのです!彼は無謀にも公道へ出ると言います!
敷地内をクルクル30分ほど練習すると「うん。公道へ出ても大丈夫そうだよ!」と自信で目をキラキラ輝かせています。
てっきり今日は敷地内で終わるものだとばかり思っていた私は、車酔いで吐き気をこらえながら「まじか?」としか言えません。
「まじだ!」と言って、彼は無謀にもマンションの敷地から外へ出てしまいました。
公道の方が細かい操作は少ないので、多少はマシに感じます。
高速に乗り大型インターのパーキングエリアまで行き、折り返してくることにしました。
だんだんと走りに余裕が出てきて、安定感も増しました。
折り返しのパーキングエリアで、悪夢が……!
ノリノリになってしまった友人は、駐車場の中の特別難しそうな場所へ入れると言って探し始めました。
「難しい場所へ入れられれば、どこへでも入れられるじゃない?」と涼しそうな顔をして言います。
そうして勢いよく頭から突っ込んだのが、よりにもよっての冒頭の高級車の間でした。
私の雄叫びも無視して2/3ほど車体を突っ込んでから、ドアを開けるスペースがないことに気がついたのです。
それから一生懸命切り返そうと前後へ動かしますが、ゲレンデワーゲンの車体が近くなるばかりです。
「あーぁ、やっちゃった」と心の中でつぶやきます。
こうなれば代わるしかありません
怖くてまったく動けなくなってしまった友人には、もう限界でした。
頭の中で両隣のドアの修理費を計算していたそうです。
セリ「どいて、私が代わる」
友人「えー?無理でしょう?」
セリ「あなたがやるより軽症で済むかもよ。それにね、一度入ったものは必ず出るんだよー!」
友人は後部座席に移り、私が運転席へ移ります。
サイドミラーを畳み、ソーっと時間をかけて慎重に出すことができました。
事なきを得て再び彼の運転となった帰り道のことです。
友人「いやー、あのセリフかっこよかったなぁ『一度入ったものは必ず出るんだよ!』うふふふ」と笑っています。
友人「そうだよな!入ったら必ず出るんだから、自分が彼女と袋小路に迷い込んだときに使って気持ちを落ち着かせよう」
セリ「ふっ、袋小路なのに結婚したいの?」
友人「うん、俺振られるかも〜。こんな風にリラックスして話せなくてさ。でもやるだけやってみるわ!勇気出たサンキュー」
すっかり胃の中が泡立ってぐったりした私と、あくまでもマイペースで能天気な友人とのドタバタでした。
皆さんも袋小路へ迷い込んだら、慌てず騒がず「入ったんだから、出れる!」と呪文のように唱えてください。
結構効果あったらしいですよ!
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