51cdcd5f6c61ee85782844f423864e1b_m

甘いものが苦手だ。スイーツを食べるのなら、コーヒーだけとかお酒の方がいい。
お酒も甘いカクテルは飲めないので「カシスオレンジ」などと聞くと、
飲んでもいないのに口の中がアマアマになってしまう。

スイーツ好きの方々が食べる姿を見るのは楽しいのだけど、
自分で食べると最後の方になると目の奥がなぜか「キーン」と痛くなる。
かき氷を食べたときと似たような痛みが出て、食べきれずに誰かに食べてもらうのが関の山だ。

ところが今日、どうしてもお菓子を食べることになった。
仕事帰り、お茶に誘われた。しかも50代の男性だ。

気温が高かったので「うまいアイスコーヒー飲みたくないですか?」とのお誘いだった。

うまいアイスコーヒーはとても飲みたい。思わず「はい!」と返答していた。
するとその人は「自分のいちばんお気に入りの店でいいですか?」と言った。

「おー、よほどのコーヒー通なのだろう」などと期待しながら、後を付いていく。
するとその人が入ったのはバームクーヘン屋だった!

それでもコーヒーを飲みにきたのだからと思い座っていると、その人は
ウェイトレスさんへ「バームクーヘンのセット2つね。ドリンクはアイスコーヒーを」と素早く頼んだ。

私が遠慮をしないようにとの配慮だろうか?
それともいつもそういう風にパンパンと決めてしまう人なのだろうか?
空想が頭をぐるぐると駆け巡る。

親しいわけでもないので、つい甘いものが苦手だと言いそびれてしまった。

そうして届いたバームクーヘンセット。

なにも食べないのは、失礼だったから食べた。
周りにいかにも甘そうなアイシングがたっぷりと層になっている。ドキドキ。

目の奥が痛くなったらやめようと思いながらひとくち、またひとくち。
「あら、おいしい」甘いのだけど疲れているのか、心地よい。

その人が「ね?ここのは焼きたてでおいしいでしょう?」
という言葉をかけられて「はっ!この人も一緒だったのだ」と思い出すほど、
自分の世界に入り込んで夢中で食べていた。
そうしてパクパクと完食した。目の奥も痛くない。

食わず嫌いをするものではないな。先入観はよくない。

反省しながら店を出て
「私実は甘いもの得意ではないのですが、これは本当に美味しかったです」
と伝えると、
「えっ?そんな女性がいるんだ。甘いもの僕も実は苦手です。
あの店はある女性をお連れしたら、とても喜ばれたことがあったのです。
それ以来女性をお茶にお誘いするときは、必ずあの店のあのセットを頼めば間違いなかったので、
今日もそうしたんですよ。喜んでもらえたのならよかったけど、先入観はよくありませんね」

どちらかというと寡黙で無骨な人だったけど、喜ばせようとしてくれていたのは伝わった。
私を喜ばせてくれるために、自分も好きでもないお菓子を頼んでくれていたのだ。

知らなければ「甘いものに強引に付き合わせる人」だと、誤解したままだったかもしれない。
次回会ったときに、警戒したかもしれない。

またその人もそういう女性がいることを知って、毎回無理してスイーツを食べなくてすむ。
一方的な好意が反感を買わずにすむ。

これって小さなことだけど、積もり積もるとストレスになることもあるだろう。

期せずしてお互いに「先入観はよくない」と反省したけど、最後はWin – Winなひとコマだった。
バームクーヘンが解いてくれた、小さなわだかまり。

先入観はコミュニケーションで解ける。
小さくても思いを正直に言葉に表すのは大切だ。


投稿がお気に召しましたら、ポチッとクリックをお願いします!

↓いつも応援ありがとうございます。

にほんブログ村 家族ブログへ