月に1度は遠出をしよう。

できれば宿泊旅行がいいけれど、
無理なら日帰りでも行けるちょっと遠い場所。

2012年5月、弘前城の桜が満開になった日、そこにいた。
前日まで5部咲きにもなっていなかったそうだ。

その年は気温がなかなか上がらず桜の開花がとても遅れていたらしい。

私が行く前日に地元の桜祭りの運営委員会で、
開催期間の延長を決定した矢先に、
急激な気温上昇で一気に咲いて翌日はすべて散ってしまった。

満開になった日に、私は偶然到着したのだ。

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そんなこととは知らずにゴールデンウイークも後半だったから、
桜はとっくに終わっているだろうと期待をせずに行った。

それなのに桜は満開で出迎えてくれた。
これほどまでに大量の桜の花が咲き誇るのを見るのは、
生まれて初めてのことだった。

翌日は大量の花吹雪とともに城のお堀も、
散った花びらで、桜色のカーペットが水面に敷かれているようだった。

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夕方にはすべてが葉桜に変わってしまったという、
たった2日間の狂い咲き。

私はそれまで1年半パニック障害と、
過敏性腸症候群で必要最低限しか外へ出られずにいた。

症状が治まってから行った、初めての旅行だったのだ。

パニック障害は一度かかると再発を繰り返して、
なかなか治らない。

私の場合発作が起きる頻度が少なくなってきたのが、
発症から半年後。

完全に出なくなるまで、さらに1年ほどかかった。

この病気にかかった人はかなりの割合で、
1年半を目処にいったん症状がおさまるということを、
治ってから知った。(例外もある)

だから今この病気で苦しんでいる方々は、
1年半あきらめずに待っていてほしい。
必ずよくなる日がくると、恐れずに休養していてほしい。

残念ながら、治っても再発してしまう人が多いのも事実。

10年以上治っては再発を繰り返す人も多いなか、
いろんな人に支えていただいたおかげで、
私は3年以上再発せずにいられている。

それでも人生で初めて社会的な接触を閉ざされたこの期間は、
とても長く感じられた。

「過ぎてしまえばあっという間だった」などと、
今でも思えないほど、先の見えない暗いトンネルの中にいた。

パニック発作と激しい下痢に交互に襲われるため、
誰にも会いたくなくなり、心を閉ざしかけていた。

自宅にいても便意を感じてから、
トイレに行くまでさえ間に合わないことが何度もあった。

それでも1年半の休養期間中、
私は自分がなぜこうなってしまったかを
追求する時間に充てていた。

心理学のセミナー合宿に大量のサプリと漢方薬を持ち込み、
研修に参加もしていた。

これは家族でさえ知らないことだけど、
激しい下痢に備えて大人用介護おむつを履き、
セミナーに参加していた時期もある。

もう二度とこの病気にならないよう、
どうしても自分がこの病気になってしまった理由が知りたかった。

心理学を勉強して自分の問題点がわかっても、
自分の考え癖をどう変えていいのかは、わからずにいた。

そんなときに弘前城の満開の桜は、
私が闘病を終えたことを祝福するために待っていてくれたように思えた。

「生きていてよかった」
と心の底から感謝が湧き上がった。

まだ再発の恐怖に怯えていた時期だったけど、
このときここへこなければ
決して味わうことのできなかった、たった2日間の風景。

病気になったことで喪失した生きていく自信を、
補ってくれるきっかけとなった。

病気になる前に思い描いていた行ってみたい場所は、
いつになっても行けないことが多かった。

弘前城の桜だって病気になる何年も前から、
見事だということを写真誌などで見て行きたいと思っていた。

それなのに忙しさにかまけて、面倒なものとしていた。

自由を奪われた時期があったから、
自由に動けることを大事にしようと思えた。

辛かったことが喉元を過ぎて、
熱さを忘れてしまうことのないように。

月に1度はまだ見たことのないもの、
出会ったことのない人、
そんなものを追い求めて遠出をすることにした。

これを続けるようになり
「あー、楽しかった」と言える時間が増えた。
今までやらなかったチャレンジを、
試してみようと冒険する勇気になった。

新しい出会いが増えた。
好奇心が満たされて、達成感もある。

決して精神的に強くなかった私が少しずつ強くなれたことで、
再発をせずにいられる大きな要因のひとつと考えている。

病気のあるなしに関わらず、
長年培ってきた思考回路を変えるのは、大変なことだ。

無理して考え方を変えようとするより、
行動パターンを変えてみることで、

思考パターンが大きく変わるということも
あるというひとつの例えをご紹介した。


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