睡眠障害が起きていた20代のころ、
心療内科で問診中に母親の生い立ちを聞かれた。
私が母は大変なお嬢様家庭に生まれ、
華やかな幼少期を過ごしたのだそう。
でも中学で母親(私の祖母)と死に別れ
高校では父親(私の祖父)と死に別れてからは、
3つ年上の母の姉がお母さん代わりになり、
苦労して育ててくれたようだ。
そう話すと
「幼くしてご両親と死に別れた
お母さんの気持ちも理解できるわよね?」
と話してそれっきりだった。
母親が寂しい思春期を送ったのは、
母のせいではないということを言いたかったのか?
確かにそれは母のせいではない。
でも眠れず苦しんでいる相談をしにきている者に、
なぜ母の生育歴の理解が今必要なのだろうか?
私には医師の言ったことが、不可解でならなかった。
この医師はもし自分が高熱を出して寝込んでいるときに、
親の生育歴と自分の状況を同時に、考えられる人なのだろうか?
自分が苦しいのに親を悲しませないよう、
高熱があっても我慢して笑っているのだろうか?
今いちばん苦しいのは誰なのか?
が抜けている気がした。
熱も外傷も出血もないから、
大丈夫なわけではない。
子供のころ心に受けた傷は
いったんは治ったかのように見えるが、
思春期に入ったころから古傷がうずきだす。
そのことはもう何年も前に終わったことだから、
自分も親もまさか自分たちが原因で
病気になっているなど、考えもしない。
あるいは一方的に
「俺のせいじゃない、私のせいじゃない」
とお互いが責任逃れをしようとする。
「将来を悩んでいるのではないだろうか?」
「失恋をしたって言っていたから…….」
など子供に現在起きている適当な事象を並べ立て、
自分には責任がないと思いたがる。
子供も弱っていれば考える力がなくなり、
まさか自分の病気の原因が親にあるとは考えられない。
仮にそのときに悩みがたくさんあったとしても、
その悩みは病気の引き金になっただけ。
幼少期に親から受けた数々の心理的な被害は、
根腐れが起きた木のように、
たとえ地上で花を咲かせていても
少しの振動や風で
数年後、ある日突然倒れてしまうのだ。
根腐れが起きてしまったら土を入れ替えたり、
木を手当てしなければ朽ち果ててしまう。
花や実がまだついているからといって、
放置していても自然には治らない。
もっと言えばお腹が空いているときは
「食べる」
それ以外お腹が満たされることはない。
ここでお腹が空いている相手に
お腹の減るメカニズムを説明しても、
なんの腹の足しにもならない。
また「誰のせいでお腹が空いたのか?」
を周囲が追求することも、ナンセンスだ。
原因追求は元気になれば、
他者から言われなくても自分でできる。
今苦しんでいる人がするべきことは、
時間がかかっても自分の苦しみが
1日も早く楽になれるよう、
手助けしてくれる相手を探すことだ。
「親の言っていることだから正しい」
「医者の言っていることだから正しい」
「専門家が言っているから正しい」
と思い込むことのないように。
自分を守るだけでなにも動かない人々が口にする、
無責任な言動に、振り回されることのないよう祈っている。
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