大切な者との別れはとても寂しいものだ。
離別、死別、ペットロス……。
どれを聞いても心が痛む。
でもその悲しみ方がいつまでも続いたり、
後追いまでしようとする気になるのは、
ほんの一部の人間だ。
健康な人間ならひとしきり悲しみ、
乗り越えることができる。
私が初めて失恋をしたのは、15歳のときだった。
突然振られてしまったのだ。
その後は20歳。
この人にはジワジワと振られた。
このイヤ〜な感じのジワジワで、睡眠障害を発症してしまった。
何日だって起きていられた。
お酒を飲んでも酔わないし、
スポーツでクタクタになっても30分も眠れば起きてしまう。
ものすごく怖い悪夢を見て飛び起きてしまうのだ。
どっちの失恋も吹っ切れるまでに、ありえないほど時間がかかった。
15歳のときは、 2ヶ月以上メソメソ泣いて暮らしていた。
周りが呆れるほどの、悲劇のヒロインぶりだった。
20歳のときは睡眠障害にかかってしまい、
「いい男なんていくらでもいるよ」
とどれだけ言われても、立ち直れない。
眠れないことが辛くて辛くて疲れ果てた末、
毎日死にたいという衝動に襲われるようになっていた。
私はこの男性が死ぬほど好きだったわけではない。
なのにどうして死にたくなるのだろう?
心療内科からは
「失恋のショック症状」
としか言われず、
ろれつが回らなくなるほどの強い薬を処方された。
それでも眠れない。
大学から一人暮らしをしていたので、
自分がなにをやらかすかわからず、一人でいるのが怖かった。
入れ替わり立ち代り友達が、アパートへ泊りがけできてくれた。
たかだか失恋で、なぜ私だけこんなに弱るのだろう?
周りの子たちだって失恋くらいするけど、すぐに立ち直っていた。
そう思うと情けなくて、さらに心がどんどん弱くなっていた。
この謎が解けたのは、
「見捨てられ不安」
というキーワードだった。
幼少期に親から安心感を与えてもらえなかった者に、
起きやすい不安の感情だ。
睡眠障害を発症したのは、
私の両親の離婚調停が始まったばかりのときだった。
父が調停を起こして、
母は毎日のように私に電話で愚痴っていた。
子供が眠れず苦しんでいることを知っていても意に介さず、
私から父に調停を止めるよう言ってほしいと言ってきていた。
また調停で父の過去の女性問題などを私に証言させて、
母は調停にかけられるような立場にはないことを、
証明してほしいと詰め寄られていた。
幼少期に私を捨てたがった母が、こういうときには頼ってくる。
その怒りにより捨てられそうになっていた、
過去の傷を失恋とオーバーラップさせていた。
オーバーラップで苦しんでいる私を捨てようとする、
交際相手が現れたことのショックで、
ポキンと脆くも折れてしまった。
また私を振ったこの2人の男性に共通していたのは、
2人とも父親を早くに亡くしていたことだった。
離別、死別にも見捨てられ感情が伴う。
友達になりやすい人に共通項があるのと同じよう、
見捨てられ感情を持った同士で、お互いに惹かれ出合ったのだ。
15歳のときの失恋相手から受けたショックは、
自分がこの世で初めて愛した人間である母に、
捨てられそうな恐怖心を植え付けられたときの追体験。
また、この人の父親はある日突然亡くなった。
同じように私をある日突然振った。
20歳のときの失恋相手は自分が親と死に別れる前に、
闘病期間が長かった。
そのときの悲しみや不安感を私で解消するため、
ジワジワとイヤな感情を出すことで、
私のトラウマを上手にいたぶっていたのだった。
いじめっ子になる子は、
いじめられた経験があるのと同じ理屈だ。
すべて無意識のなせる技だ。
見捨てられ不安の感情は幼少期から、
18歳くらいまでに発生するとされている。
その間に親から見捨てられ不安を経験してしまった者は、
大人になっても捨てられることにとても敏感で、
自分が捨てられる前に捨てようとする。
恋愛が長続きしない傾向にもある。
だからといって死別、離別を
誰とも経験していない相手を探すのは、
本末転倒となってしまう。
出会いがあれば、別れは必ず誰にでも訪れる。
この不安感を解消しない限り、
別れがくるたびに自分を傷つけてしまう。
私はこのキーワードを知ってから、
別れが怖いものではなくなった。
もし誰かと別れることで、
心が異常に動揺して受け入れるのが困難なときは、
考えてみてほしい。
自分の幼少期に親から愛されなかったり、
離婚、死別してショックを受けたことはないか?
あるいは相手にも、同様の経験はないか?
こういった原因が見つかったときは、
「自分が今苦しんでいるのは今の別れの苦しみではなく、
幼い頃の見捨てられ不安が顔を出しているときだ。
もうその恐怖は若くて強い自分が乗り越えたから、
今の別れで怯えなくていい」
と言い聞かせることで、
得体の知れない不安感を沈めることができる。
私がこの無意識の心のカラクリを知ったのは、
40歳を過ぎてからだ。
早くに知って理解できていたら、
もう少し楽に生きていけたかもしれない。
これを読んでくださった方に
似たような問題が起きているのなら、
1日も早くこの問題から逃れていただきたい。
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最近突然ふられてすごく落ち込んでいました。
昨日までは、大好きといっていたのに、本当に突然で
サインにも気づかず…死にたいとも思いました。
でも、あなたのブログを読んで私も幼いころ両親は喧嘩ばかりしていて
私にはあまりかまってくれませんでした。
そういう見捨てられ不安があったのだと思います。
自分は価値のない人間だと思っていました。
るなさん
昨日まで大好きと言われていて、突然ふられたらとてもショックだったと思います。
見捨てられ不安がない人でも、大変なできごとです。
お相手にどんな心の変化があったのかは知りませんがこの投稿で、るなさんが「ものすごく価値のある人間」だと感じていただければ、幸いです。
「大変だったのによく死ななかったね!偉かったね!」と声に出して、自分で自分にハグしてあげてください。