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私なら投薬を受けるでしょう

副作用のリスクが大きい割に治癒率の低い薬の使用許可を求められて、しかも即断しなければならない。

誰かに相談したくても、その時間もない。

脳が拒否する同意を求められて、頭がボーっとなってきました。

ただこれだけのリスキーなありのままのデータを、事前に見せてくれる病院は誠実な病院だと思いました。

もちろん病院側にも説明義務がある薬なのかもしれませんし、訴訟をされない対策を講じられてのことだとも思います。

事実として時間のない中で同意を取らなければならないほどの、強い薬だということでもあります。

もし脳梗塞になったのが、私だったらどうする?

答えは「使う」です。

長期に渡る薬の服用を避けるべく食事や心を整える方法を実践していますが、一時的には必要なときもあります。

例えば麻酔も大きなリスクがありますが、いざ怪我をしてしまったのに麻酔なしで手術を受けるのは不可能だというのと同じ解釈です。

このお薬は4.5時間内にしか使えないお薬ですので、今回使えばその後はもう使用ができません。

定期的に服用しないものなら「今回に限って」ということで使うでしょう。

ただこれも私個人に当てはめた場合ですので、副作用が起きた場合も私が苦しみを引き受けるということです。

しかしながら今回は私の決断で、副作用の苦しみを母が受けてしまうという部分がどうしても引っかかります。

母の意志を尊重することに

猜疑心や不安感を抱きながらの投薬は、例え良薬だったとしても効果的に作用してくれないのではないか?という気持ちになりました。

投薬を受ける、受けない、どちらにしても五分五分なら、その確率をありのままに説明して、母が納得をした形で治療を受けるのがいちばんいい。

幸い母には意識があったので薬のデータの説明をして、判断を委ねることにしました。

彼女が「イヤだ」と言えばどれだけ医師から強く勧められても、投薬をスッパリとお断りさせていただこう。

また彼女が「受けてみる」と決めたのならどんな副作用が起きても、一緒に引き受ける覚悟を私自身も決めました。

母の麻痺が消えている!けれども脳梗塞は……写っていた

するとストレッチャーに乗せられて、母はMRI撮影から帰ってきました。

それまでは母だけが入っていた処置室への入室を、私も一緒に入るよう促されます。

母へ薬の説明をしようかと思ったと同時に母が「(麻痺が)取れたよ!体が動く」と嬉しそうに満面の笑みで言うのです!

垂れ下がっていた左顔面も、元に戻っています。

こんなに嬉しそうな顔になった人に、強い薬の説明をして怖がらせるかと思うと気持ちが萎えます。

医師に「麻痺がないと言っていますが」脳梗塞はなかったということに一抹の望みをかけて伝えると、医師よりMRI画像を見せてもらいながら、説明を受けました。

「左半身に麻痺が出たということは、右脳に脳梗塞が起きたということです。これがお母さまの右脳画像なのですが、ここに小さな影があるのが見えますか?(左脳の画像もみせてくれながら)こっちにはない影ですね?まだ小さいのですが、これが麻痺を起こしたものだと考えられます。今麻痺がなくなっていても、ここにあるということは、それ以外にも(どこかの血管に)固まった血液が潜んでいるかもしれません。すると次の脳梗塞が出てくるという可能性もあります」

確かに右脳の画像にわずかながらも、影が見えます。

勝手に私が作った「母の仮病説」にすがりたかったけど、これはもう認めないわけにはいきません。

そうして医師は私に、薬の使用の確認を取りました。

私が複雑な顔をしたようで(後から「あのときセリが困り果てた顔をしていたのよ」と言われました)母が心配そうな顔で、私を眺めます。

セリ:「母に意識がありますから、本人に確認を取らせていただいてもいいですか?」

医師がうなずきました。

セリ:「あのね、今から使用するお薬はとても強いお薬でね、効果もあるんだけど副作用が出たら大変な薬なの」

言葉を続けようとすると、医師が横から説明を入れてくれます。

医師:「前はね脳梗塞が発見されても、使用できる薬がなかったの。でも今なら使用できるんですよ。4.5時間以内なら間に合うお薬なんです。間に合わなくて使えない人が多いけど、娘さんが早くに連れてきてくれたからお母さんには使えるんです」

母:「……セリはどう思う?」

セリ:「うん、使っても使わなくても五分五分だと思うから、いいように決めていいよ」

母:「他に方法がないんでしょう?だったらやるしかないのかしら?」

医師:「では(投薬を)開始しますね。病室へ運びますよ」

ストレッチャーが、処置室のドアを出ようとしたときです。

母「なんだかよくわからないねぇ」

と大きな声で私にすがるように言いました。

セリ:「すみません、母がまだ納得していないようなんです。もう少し時間をください」

医師:「(看護師さんたちへ)おーい、ちょっと戻ってきて!」

セリ:「血をサラサラにするお薬で血流がよくなりすぎると、今度は血管が耐えられなくなって破けて大出血を起こす可能性があるんだって。でも(大出血)が起こらない可能性もあるし、今できている脳梗塞以外の他の場所に新たにできる可能性も低くなるんだって」と言いながら、渡された書類のデータを読み上げて聞かせました。

医師:「こうしている間にも、次の脳梗塞が襲ってくるかもしれないんですよ。そのとき時間を過ぎていると、もうこの薬は使えないのです。出血が起これば万全の体制を整えていますから、止血をします。ここは病院ですから」

セリ:「止血をしていただけるのですね?」止血ができるという可能性を、考えていませんでした。

母:「そうなんですね。わかりました、受けさせてください。よろしくお願いします」

ということで、母が投薬をすることを自分で決めました。

優しい医師からの説明

時間が迫っていたせいで険しくなっていた医師の表情が、母が集中治療室へ連れて行かれると驚くほど優しくなりました。

医師:「本当にこの病気は時間との戦いでして、24時間体制で経過を観察しますし出血が起きても止血をします。今晩は娘さんもお帰りになれますよ」

セリ:「薬の副作用はどれくらいの時間、警戒していればいいのでしょう?」

医師:「出るとしたら24時間以内です。必ず誰かが付いています、何かあればすぐにご連絡をします」

セリ:「よろしくお願いします。もっと大きな脳梗塞の影とかでしたら強く決断できたのですが、影が小さかったのでこのまま使わなくてもいいのではないかと躊躇してしまいました」

医師:「脳梗塞が大きかったらそれだけ薬の効果も低いんです。私は自分の家族が同じ状況でも(tPAを)使いますし、自分にも使います。なにかわからないことがあれば、いつでもなんでも聞いていただいて構いませんから」

「自分にも自分の家族にも使う」と医師が言ってくれたこのひとことが、とても元気を与えてくれました。

これまでこのような安心する言葉を投げかけてくれる医師はいませんでした。

つづく


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