オッサンに多いオレがオレが病

「オレはねー」二言目にはこのセリフ。

2、3ヶ月に1度、仕事の関係で会う人だから聞かないわけにはいきません。

私が知っているオレがオレが病持ちの重症患者さんのお話です。

オッサンはだいたい毎回「最近どんな本を読んだ?」と聞いてきます。

私が答える「そうですね」の「ね」の音にかぶせて「オレはねー」と私の答えは遮られる。

相手への質問は、自分がどんな本を読んでいるかを伝えるためだけの枕詞にすぎません。

私の知っている年配層には、こういう人たちが多くて苦手意識を持っています。

そうして本で得たウンチクを延々と語っていました。

そう、このオッサンは本が大好き。

どれだけ承認欲求が強いんだろう?と思いつつ、根はとても親切で優しい人なので適当にスルーしていました。

「オレが」と口でも言っていますが、行動も「オレがやる」でサッサと行動へ移して自分でしてくれるので、これはこれで楽なのです。

そんな適当なお付き合いも、早3年。

60歳にそろそろ手が届くご年齢の性格は、もう治らないだろうと諦めていますから、なんの期待もいたしません。

このどうしようもないオレがオレが病のオッサンの前では、ひたすら口を閉ざす「ハマグリセリ」に徹していました。

オッサン哲学書に出会う

かれこれ1年ほど前にオッサンは、ある哲学書に出会いました。

最初こそ「まず考えろっていう話なんですよ」などと私や私以外の人間にも、ウンチクを垂れていたのです。

相変わらず言葉のキャッチ・ボールはできないので、適当に受け流していました。

オッサンはその哲学書に首ったけで、どこへ行くにも持ち歩き、寸暇を惜しんで読んでいました。

新品だった本はボロボロになりボロボロ具合と並行して、言葉のキャッチ・ボールが少しずつできるようになってきています。

そうして「最近どんな本読みましたか?」とも聞かれなくなりました。

今ナントおっしゃいましたか?

昨日はそのオッサンと他の人も交えて、意見交換をする日でした。

私はある疑問を提起しました。

オッサンがすぐに的確な返答をくれたので「なるほどー!」と言った後「なんですって?い、今ナントおっしゃいましたか?」と思わずオッサンを二度見してしまいました。

オッサンは私がなぜ二度見をしたのか、わからないようでした。

これまでこういった場面でのオッサンの発言は、すべて自分の話に持っていく流れを作るだけのもので、誰も耳を傾けてはいませんでした。

私のみならず他の人たちも「だってねー」とクスクス笑いながら、オッサンの明らかな違いに気がつきました。

まだキョトンとしたオッサンへ「まさに私が欲しかった疑問の答えを、ありがとうございます!」と伝えると、オッサンの顔がほころびました。

「ちょっとは変わりましたか?」というので、全員で「ぜんぜん違う〜!」と答えると、さらに嬉しそうに笑っています。

オッサンは「今までは本から得た知識がすべてだと思っていてね。それを人に教えることが親切だと。若い人たちから尊敬されたくて仕方なかったんだろうね。だけど哲学書には、さまざまな角度から見ることをまず考えろと書いてあって、多面的な角度から人の意見を聞くよう心がけたら効果あったのかな?」

ウンチクを垂れた後必ずしていたドヤ顔も、昨日はありません。

淡々とした照れ笑いで話してくれました。

自分の主義主張を変えるって、なかなかできることではありません。

特に自分の間違いを認めるのは、誰もが1ミリだって受けとめたくないものです。

若い人にも難しいことを、頭の固いと言われている年代の人が自分の意見を変えるのは、どれだけ難しいことだったでしょう。

オッサンご尊敬申し上げます!

私ども年少者はあなたのように、進化する大人の背中を追って行きたいのです。

年配だからというだけで無条件に敬わせるような人が、履いて捨てるほどいるなかで一抹の希望が差し込みました。

ただ哲学書をちょっとだけ読んでみましたが、私には一瞬で眠りに落ちるほど訳がわかりません。

読むのは諦めてオッサンの今後の発言や、態度から学ばせていただくことにしました!

私も年と共に私が私が病に罹らぬよう、今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。


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