人と人との間には最適な心理的距離パーソナルスペースというものがある。
物理的なパーソナルスペース
例えば私の場合、自分の近しいと感じている人間に「こっち」と背中に触れられて誘導されたり「行っておいで」の言葉の代わりに背中を押されたりするのは、まったく問題がない。
けれども近しいとも思っていなかったり、会ったばかりの人間にたとえ軽くでも体を触れられるのはとても苦手だ。
混んでいる電車で隣り合わせに立っている人の腕が触れたり、背中同士が接触しているのに平然としている人もいれば、嫌がって押し返してくる人もいる。
人それぞれ「近い遠い」の好きな感覚が異なるのが、物理的な距離で測る心のパーソナルスペース。
距離も半径20センチまでならOKだったり、1メートルほど距離が欲しい人とさまざまだ。
心理的なパーソナルスペース
「この人には自分の話を聞いてほしい」「この人には自分のことは伝えたくない」という振り分けも、すべて無意識下で相手との心理的なパーソナルスペースの距離を測っている。
パーソナルスペースの振り分けは赤ちゃんの頃からある。
誰にでも抱っこされるのが大好きで愛想のいい子が、ある人にだけ絶対に抱っこされるのを拒否する場面に遭遇したことはないだろうか?
その人がそれ以上近づくと、生理的に不快をもよおすことを赤ちゃんが感じているときだ。
こんなときに親が相手に失礼にならないよう、無理やり抱っこをさせてしまうと赤ちゃんには大きなストレスがかかる。
理屈のいい悪いではない
私が自分が近しいと思っていない人から、触れられるのがイヤなのに理由はない。
特別誰かからベタベタ触られて、イヤだったというトラウマがあるわけでもない。
誰にとっても同様で、ただの個体差なのだ。
心理的な距離が誰とも遠いのに、誰からでも体に触れられるのは一向に構わないという人もいる。
またその逆で心理的には誰とでもオープンハートで近く接していても、体に触れられることだけを嫌う人もいる。
それはその人の「感覚的なもの」としか言いようもなく、いいも悪いもない。
それと何年も心地のいい距離感だった相手が、親しくなるにつれて急に心理的な距離を縮めてきたことで、違和感を感じることもある。
同じ相手でも、常に一定ではないのもパーソナルスペースだ。
当然自分の相手に対するパーソナルスペースも変化する。
自分のパーソナルスペースは自分でしか守れない
自分のパーソナルスペースを侵すまでに、相手が変化をして驚くのは侵された方だ。
もともと人間は変化を嫌う動物なので、相手の変化にすぐには適応できず恐怖心を抱く。
また侵した側には悪気もないし、自分の距離感が相手の思わぬ距離まで、侵入していることに気がついていないことがほとんど。
自分が不快を感じていても、相手にはまったく伝わっていない。
一緒に暮らす家族が、いちばんパーソナルスペースを侵しやすい
ここまでお読みくださった方はもうお気づきだろうが「親しい間柄」がいちばん相手のパーソナルスペース変化の影響を受けやすい。
そうして変化の影響が、もっとも顕著にあらわれやすいのが「家族」だ。
ずっと自分の後ろを付きまとっていた子が、成長とともに距離を遠ざかっていく。
子供にとっては健康的な成長の過程なのだけど、それを寂しく感じてしまう親も多い。
ここまでは親も子供も問題ない。
問題になってしまうのは、寂しく感じてしまう気持ちをこらえきれずに近づこうとするあまり、子供の親に対するパーソナルスペースを侵してしまうことがある。
夫婦間でも同様のことが起こる。
自分と異なるパーソナルスペースを持つ配偶者へ、寂しさを感じてしまうことだ。
相手より、自分のパーソナルスペースの方が近い場合によく起こる。
相手が自分を遠ざけているように感じる、自分になにか原因があるのではないか?
あるいはもう自分に愛情がなくなってしまったのではないか?と感じることもある。
家族になり長い年月が経てば、恋人同士だったころの距離とは同じにはならない。
子供が生まれれば、配偶者との関係性もさらに変わる。
どちらかの距離が縮まっても「おたがいさま」とはならないのが残念だけど、それはパーソナルスペースの変化がお互いに違うだけ。
前述した通りパーソナルスペースは生理的なもので、理屈ではないし自分も相手も変化をする。
赤ちゃんにもあるもので、どれだけ年齢が低くても尊重してあげたい。
理屈ではないものに原因を探そうとすることや、無理して相手との距離を合わせて同じにする必要はない。
反対に相手から自分の思わぬ距離感で接近されたり、遠ざけられても「離れて」とか「近寄って」と伝えることは相手のパーソナルスペースを侵すことにもなる。
だから自分の取りたい距離で近づいたり離れたりすることで、自分にとっての最適な距離を考えることが必要だ。
離れてほしい人には自分が離れてみる。
近寄ってほしい人は、自分から近寄ってみる。
そうして万が一完全に離れてしまうような事態に陥ったとしても、それはあなたが何かをしたせいではない。
思わぬ距離感でストレスを抱えながら、イヤイヤ相手の距離に迎合することの方が不誠実だ。
どれだけがんばって合わせても、不誠実な付き合いにはいずれ別れが訪れる。
自分のパーソナルスペースを知ること。守ること。
それを踏まえることで自分の最適なパーソナルスペースまでにしか近寄ることができない人を、集めることになる。
また悪気なく近寄り過ぎた相手でも、あなたを大切に思うのなら、こちらから離れれば相手も距離を置いてくれる。
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