差し出された『ノルウェイの森』

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睡眠障害だった20歳のときのことです。

一人暮らしをしていた部屋には、眠れない私を気遣ってくれる友人たちが集ってくれていました。

とても楽しかったし、ありがたかったです。

けれども時折どうにもならない、不安感に襲われていました。

なおかつ不安になる根拠がわからないので、得体の知れない恐怖心も加わります。

そんなとき友人の1人から差し出された2冊の本。

当時出版されたばかりだった村上春樹著の、大ベストセラー作『ノルウェイの森 』上・下巻でした。

不安なときに広がる空想の世界

それまで小説を読む習慣がないうえ『ノルウェイの森』は明るい内容の小説でもなさそうです。

さらに不安になってしまうのではないかと思いましたが、読んでみることに。

夢中になって、一氣に読了していました。

読んでいる際の自分は小説の世界のなかへ入っていて、すっかり登場人物たちへ感情移入をしています。

当時の自分とは別の人生を送っているような錯覚へ、一時的に陥りました。

追い立てられるのが苦手な私が、自分のペースで無理なく追うことのできるストーリー。

するといつの間にか、正体不明な不安感までどこかへ飛んでいます。

小説のなかには常にヒントが!

それ以来眠れない夜のお供は、小説となりました。

投薬なしで眠れるようになってからも、寝る前に小説を読む習慣は絶えることがありませんでした。

20歳〜40代に入るまで、年間150〜200冊ほど読んでいました。

常に氣になるのは、登場人物の有事の切り抜け方です。

自分には起こらない感情や、回らない機転。

「こんなことが起きたときどうするの?」と登場人物の対応をドキドキしながら読んでは、ハーっとため息をついたりしていました。

けれどもこのときの仮想体験が、実際の有事のときに役に立ったことも多いです。

満たされない感情を小説で補うことも

愛情深いストーリーでは、それまで得たことのない愛情をもらいました。

押し込めていて表現できない怒りを、解放することも。

記憶の片隅でくすぶっていた、悲しい感情を刺激されて号泣したり。

小説にはダイレクトに視覚に訴えてくる映画や舞台鑑賞より、文字から場面を想像するひと手間が加わります。

このひと手間が自分の好きな空想の世界を構築し、さまざまな感情を引き受けてくれるのです。

また現実の世界ではないので、イヤな記憶を刺激しないクッション役にもなってくれます。

得体の知れない不安の解消も

いちばん驚くのは自分のなかの正体不明な不安感の正体が、わかるときがあるのです。

あるときはそのときに置かれている状況に、似たような場面展開のときの登場人物の不安そうな反応で。

一方で自分が楽しいと感じていたことを、登場人物が不安として表現しているとき。

潜在的な不安ゆえ、わざと楽しく表現することを選んでいたのだと知り少し驚きます。

けれどもこれがきっかけで、実は対処の必要な不安と向き合うことになったり。

「得体の知れない」というだけで不安感を生みますが、正体がわかれば怖くなくなることも多いのです。

ここのところ小説を読んでいなかったので、読書の秋にしたいと思います!

とはいえ長きに渡り私を支えてくれた、何千冊もの小説を近年は読んでいません。

ここのところ実用書に偏ってしまっていて、面白そうと思って買った小説もすっかり「積ん読」状態です。笑

食欲の秋の魅力にはかないませんが、読書の秋にも戻りたいものです。

SNSが普及して以来、必要な情報はあらかた事足りるいい時代です。

けれども小説から得られる情報は、SNSとは違った感情を満たしてくれることでしょう。

どうぞ不安感に襲われたときは5分でも10分でも、小説を読む時間を取ってみてください。


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