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先月投稿した会いたい人にはすぐに会いに行こうで書いた叔母を、やっと尋ねることができた。

すぐといっても1ヶ月以上経ってしまったのは、九州にいるからだ。

それと会った後の今はどうってことがないのだけど、叔母の居場所を知るために少し気の重い作業があった。

居場所を知るためには、叔母の子供の誰かへ連絡をしなければわからなかったのだ。

叔母の娘である従姉に電話をすると、私の母との遺産相続で揉めた経緯があるので、案の定そっけなく少し気まずかった。

けれども現在は、老人用ケアセンターに入っていることを教えてくれた。

ついでに認知症が始まっていて自分が見舞いに行っても覚えていないことが多いから、私のことを認識できるかはわからないとも教えてくれた。

ぎこちない会話ながらも久しぶりに従姉の声を聞けたことで、少し前進したような気になる。

農業をやっていた叔母はとても健脚で、7、8㎞の距離を平気で、すごい速さで歩く人だった。

ところが3年前に転んで骨折をしてから、車椅子生活になってしまったそうだ。

80歳を過ぎても元気いっぱいの姿しか見たことのなかった叔母が、車椅子で生活をして認知症を患っている。

そんな姿はまったく想像できなかったけど「私のことをわかってくれなくてもいいや」と思いセンターへ向かった。

病室にはいずにおやつの時間だったようで、職員さんから談話室へ案内してもらう。

寝たきりではないことがわかって、まずホッとした。

案内された談話室で他のご老人2人とテーブルを囲んで、車椅子に座っていた。

髪もきれいに染めてもらっていて91歳には見えないほど、変わっていなかった。

「私、誰だかわかる?」

叔母の前にしゃがんで話しかけると「わかりません」と答えられて「やっぱり」と覚悟はしていたものの、少し気落ちした。

「セリだよ」と言うと「あ、セリちゃん」となんとなくわかったようだ。

父の長姉なので「◯◯(父の名前)の娘だよ」と言うと「◯◯はもうずっと前に死んだばい」と答えて少し涙ぐむ。

父のことは覚えているのか。

「おばさんの兄妹の名前教えて」と聞くと、兄妹ではなく自分の子供たちの名前を答える。

父の名前は覚えているのならと、私の母の名前や兄妹の名前を言ってみた。

すると母の名前と、兄の名前には反応した。

私のことも誰だかはわかるのだけど、名前だけが出てこないようだ。

段々と会話がつながり、思い出話や近況をたずねるようになった。

30分以上話をすることができたけど、あまり疲れさせるといけないので切り上げることにした。

叔母の手を握ると「まぁ、セリちゃんの手はあったかいこと」と言って離さない。

「またくるね」と言うと深々とうなずいてくれた。

拝み手をしながら「ありがとう、ありがとね」と最後だけ泣きだした。

「私の方こそありがとうだよ。またくるから、それまで元気でいてよ頑張って!」

こんな老人に頑張ってなどと言ってはいけないのかもしれないのだろうけれど、言わずにはいられなかった。

すると同席していたご老人のお一人も泣き出した。

「私は誰もおらんけんですね。うらやましくて、見ていて涙の出てきます」と言ってくれた。

センターを後にしても、やはり元気だったころの叔母の姿しか頭に浮かばない。

現実逃避をしているのかもしれないし、想像していたほど叔母が衰えていなくて安堵したのかもしれない。

寝たきりで私が行っても話などできなくて、もしかすると寝顔だけ見て帰ってくるのかと思っていた。

それなのに起きていてくれて、話ができて、喜んでもらえたことで十分すぎた再開だった。

胸がいっぱいになり「よかった〜、きてよかった〜」という言葉しか出てこない。

この投稿をお読みになった方々で、もし誰か思い浮かぶ人がいたならばぜひ会いに行かれることをお勧めする。

すぐ近くにいる人は「いつでも会える」と思ってなかなか会わないものだし、遠くの人は「いつか会いたい」と思っていても距離のせいでなかなか会いには行かない。

けれども会えれば本当に嬉しいし、元気な姿を見るだけで胸がいっぱいになる。

また会いに行きたいとは思っているけれど、老人は急変などしやすく明日の保証はない。

もう会えないかもしれないと思いながら、生きている叔母の手を気がすむまで握らせてもらった。

死を想像するのは縁起でもないと思われるかもしれないけど、縁起でもないことが起きたときに後悔しないためにも死を想像する。

自分だって、いつなにが起こるかわからないのだから。

※初回の投稿で不適切な言葉を使用しておりました。ここに訂正をして、お詫びを申し上げます。
またご指摘くださった方、誠にありがとうございました。


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