亡くなった人が夢枕に立つと「成仏していないから」とか「供養が足りない」と聞く。
けれどもお盆が近くなると、私の夢には過去にお別れした者たちがときどき登場する。
者と書いたのは、実は10年前に14歳で亡くなった飼い犬が昨晩の夢で登場したからだ。
人でもないし、物でもない。
たまたま先日友人と「犬飼いたいよね」と話していたからだろうか?
とても楽しい夢だった。
超小型ポメラニアンの雌だった。どこへ連れて行っても、とても可愛がってもらえる元気な犬だった。
2歳になった頃からときどき痙攣をすることがあり、獣医さんへ観てもらっても「痙攣しているところを見ることができないと、なんとも言えない」と原因がわからずにいた。
4歳のときに痙攣が1日何度も出るようになり、獣医さんへ一晩預かってもらうと「水頭症ではないか?」と言われた。
水頭症は脳に水が溜まる病気だ。
溜まった水で脳神経が圧迫されて、痙攣を起こしてしまうということだった。
今から20年近く前は動物用のCTは、全国でも東大の獣医学科に1台あるだけ。
そこへ紹介状を書いてもらいCTを撮ってもらうと、やはり水頭症という診断をされてしまった。
東大の先生はCT画像でどこに水が溜まっているかを説明してくれたけど、治るか治らないのか?と問いかけても答えてくれない。
なぜ水頭症にかかってしまったのかと聞くと「人間が無理な繁殖を繰り返すから」とだけ機械的に答えた。
東大から診断書とCTがかかりつけの獣医さんへ送られて、改めて治療方針の説明を受けに行った。
ご夫婦2人とも獣医さんとして経営しているものすごく優しい方たちだったけど、その日だけは悲痛な顔をして出迎えられた。
その険しい表情から、楽観視はできないことを理解した。
すると獣医さんは「この子にとっての最適な薬の量さえ探すことができれば、一緒にいることは可能です」と励ましてくれた。
このひとことでどれほど勇気が湧き、安心させてもらったことだろう。
ステロイドを服用させて、痙攣を抑えることで様子を観ることにした。
それから超小型の2.2キロの体重に適量の、ステロイドの量を探すのが獣医さんたちを悩ませた。
0.01グラムの増減で凶暴になってしまったり、ボヤーっと1日中どこを見ているかわからないほど変わる。
それでも獣医さんたちは諦めずに1ヶ月以上かけて、根気強く私の犬の体の適量を探し当ててくれた。
私もペットフードを与えるのをやめて、手作りの餌を与えるようにした。
すると1年でステロイド投薬から離れることができた。(どの犬にも該当するとは限りません)
そうして15歳を間近に控えたときに、腎不全で天国へ旅立った。
「あの大病をしたにもかかわらず、よくこの年齢まで育てましたね。飼い主として上出来です」と獣医さんはねぎらってくれた。
子犬のときと変わらない愛くるしさで、ペット用の火葬場で「子犬ですか?」と言われたほどだ。
それから何年経っても、犬(ペット)は飼えずにいる。
なにかが起こったときに24時間一緒にいてあげられる環境になるまで、新たなペットを飼わないと私なりに決めている。
そんななか久しぶりに、夢のなかに出てきてくれた。
夢のなかの私は「亡くなった犬」という認識がなく、犬のお母さんに戻っている。
手が餌の作り方を覚えていて、冷蔵庫の食材を切って作っている。
犬はキチンとお座りをして、私が作る姿をじーっと眺めている。
出来上がったごはんをを与えると、犬は無心で食べてくれた。
途中私の顔を見上げるので「おいしい?」と聞くと、ペロンと舌舐めずりをして答える。
そうして美味しかったのお礼に、私に抱き上げろという仕草をして私の唇を再びペロン。
そのあと私の手の甲をペロン、ペロンと舐める。そこで目が覚めた。
目が覚めると手の甲にはあの子から、舐められた感触がそのまま残っていた。
そうして「おいしい?」と聞くと舌舐めずりをしたり、食後は必ず抱っこをしてお礼を言いにくる一連の「儀式」を10年ですっかり忘れていることに気がつく。
ペット霊園の和尚さんが納骨をするときに「いつまでも悲しんでいてはいけません」と言われてから、私はあの子の仕草などを極力思い出さないようにしていた。
今はあの子の仕草を思い出しても、悲しくない。愛おしいだけ。
夢が「あの子はそんな子だった」と思い出させてくれて、起き抜けはとてもハッピーな気持ちだった。
なにを伝えるために夢枕に立ってくれたのかはわからないけど、決して不吉な感じなどしなかった。
こういう不思議でホンワカする夢を、お盆が近づくとときどき見る。
失った悲しみから立ち上がっていることを、再認識させてくれる私にとっての「吉夢」なのだ。
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